2025.12.01
大内転筋の肉離れについて
大内転筋の肉離れについて
【患者】
40代女性
【来院日】
令和7年11月5日
【主訴】
右膝関節の痛み
【既往歴】
10年以上前に右足関節骨折(ope)
現在、ボルトが4本入っている。
【発生機序】
11月2日に、長時間運転(約8時間)をしていて
急に立ち上がった際に右大腿部から膝関節に
痛みがあった。
その後、日常生活や仕事上での歩行、しゃがみ込み
動作での痛みが消えず当院に来院されました。
今回の発症について特に思い当たる原因はないそうです。
この患者さんは、2~3年前からウォーキングを毎日3時間程行っていた。
【診察所見】
大内転筋付着部の圧痛(+)点状出血斑(+)
膝関節屈曲(+) 跛行(-) 歩行時痛(+)
腫脹(+) 熱感(-) 発赤(-)

左は筋線維が均等になっているのに対して
右は筋線維の連続性がなくなっているため
エコー所見にて
大内転筋付着部の肉離れ1度~2度になりかけている所見となります。
【施術/経過】
初診~1週目 大腿近位~下腿遠位のギプス固定
+松葉杖
LIPUS、コンビ処置
【筋線維が断裂すると、炎症(出血)を伴います。
ギプス固定と松葉杖で患部に負荷をかけないこと
コンビという機械で超音波と電気をあてることで
炎症を抑え疼痛の軽減を図りました。
また、足趾の内在筋リハで患部外の拘縮予防を
行います。】
2週目~3週目 お風呂で固定を外しての歩行では
痛みなく、患部の圧痛(-)
エコーにて筋線維不明瞭の為、
シーネ固定+松葉杖
【初診のエコーに比べ、不明瞭ではあるが
筋線維が現れはじめてきている為
シーネ固定と松葉杖でしっかりと筋線維が現れるのを促進します。】

3週目~ 先週と同様固定を外しての痛みは
無く、患部の圧痛(-)
膝関節完全屈曲(+)、エコーにて
点状出血がみられ大内転筋の
肉離れではなくハンター管の剥離が
起きていたことが分かった。

【考察】
本症例は、長時間の運転、ウォーキングによって腸腰筋・大腿四頭筋の過緊張が起こっていたと考えられる。
それにより、股関節屈曲、内旋位、膝関節屈曲位が強くなったことと、
右足関節にボルトが入っていることから足関節の可動域が低下し、歩行時のニーインが起こっていたと推察する。
その為、大内転筋に負荷がかかりハンター管の剥離が起こっていたと考えられる。
【今後の治療方針】
最終的な目標は、歩行時のニーインの改善です。
まずは、患部外の手技療法を行い筋肉の緊張を和らげます。
平行して自重をかけずに大殿筋や中殿筋を鍛え、足関節リハを行い健側の可動域に近づけます。
その後、荷重をかけての母趾荷重のカーフレイズ、
ランジ、内転筋群と大腿前面のストレッチを行う予定です。
【総括】
本症例は、初診時に肉離れとして処置していたが、
エコーでの経過観察でハンター管の剥離も起きていたことが分かり難しい症例だった。
問診時に思いあたる外傷の原因がなかったため、
肉離れは考えづらかったがエコーでの不正像は明らかだったためギプス固定を選択した。
これは、最初にハンター管の剥離を見つけていたとしても同じ処置にしていたため、結果的には良かった。
また、足関節は骨折の既往歴、X脚ということもあり今後再発が考えられる為リハビリの重要性を
伝え行っていきたい。



