2026.03.03
肘関節内側側副靱帯損傷について
肘関節内側側副靭帯損傷について
【患者】
14歳 男性 硬式野球部 右利き
【主訴】
右肘関節の痛み
【来院】
令和8年1月19日
【現病歴】
昨年の8月頃、投球時に右肘に痛みを自覚し
1~2週間程前から肘の曲げ伸ばしでも痛みがあるとの事で、来院されました。
現在投手、遊撃手として試合に出場しており
投手の際にはサイドスローで投球している。
【既往歴】
小学校6年生の時に右肘を痛めたことがあり
その際は整形外科を受診し三ヶ月間の投球禁止。
その後症状が軽快したため投球を再開。
【運動歴】
小学2年生~6年生まで軟式野球
中学1年生~現在まで硬式野球
【診察所見】
右肘関節内側側副靱帯(AOL)、
右橈側手根屈筋腱、Tenderness(+)
外反ストレステスト 30度(-)60度(+)90度(-)
右肘関節の屈伸痛(+) エコーにて靭帯断裂(-)
【評価】
- 右橈側手根屈筋腱損傷の疑い
- 右肘関節内側側副靱帯(AOL)損傷の疑い
【病歴】
本症例では、チームで週に2回行っている15㎏程度のダンベル用いたアームカールにより、
高負荷なトレーニングが継続されており、オーバーワークの状態であったことが考えられる。
また胸郭伸展可動域低下により肩関節外旋動作に制限があったこと。さらに投球フォームはサイドスローあり
球速を出すために後期コッキングから加速期にかけて肘関節が伸展傾向となり遠心力を利用すること。
加えて軟式球と比べ硬式球は重量があるため握力が必要になることなどの要因が重なった結果、
投球動作時に肘関節内側への外反ストレスが増大し、右橈側手根屈筋腱および右肘関節内側側副靱帯(AOL)への負担が蓄積し、
疼痛が出現したものと考えられる。
【施術/経過】
初期対応として肘関節の負担軽減を目的に筋力トレーニングを一時的に中止するよう指導した。
第1週間目および第2週間目は損傷部位の疼痛緩和および前腕屈筋群の筋緊張緩和を目的に、
患部に超音波治療及び前腕に手技療法を実施した。
その結果、日常生活動作における肘関節の屈伸痛は軽減した。
しかし投球練習を行った際、約20球で右肘内側に疼痛を自覚したため当日は投球を中止したとのこと。
3週間目より胸郭伸展可動域改善を目的として運動療法を開始した。
(Cat &Dog ストレッチポールを用いた胸郭伸展運動)
また、右手関節を背屈させる前腕屈筋群のストレッチを指導。
前回の投球練習から一週間後に、約30球の投球練習を行ったが、その際は痛みを感じることなく投球する事が可能だった。
しかし、再評価において右肘関節屈伸痛(-)であったが、
右肘関節内側靱帯(AOL)、右橈側手根屈筋腱Tenderness(+)を認め
外反ストレステスト60度にて、疼痛が誘発されたため、疼痛緩和処置は継続して実施した。
【今後の治療方針】
現在は投球時の疼痛は軽減しているものの、60度での外反ストレステストで疼痛が誘発された。
このことから肘内側への外反ストレスは残存していると考えられる。
今後は肘関節内側の負担軽減を最優先とし、疼痛および圧痛の消失を指標に筋トレの
段階的な復帰を図る方針とする。引き続き疼痛緩和処置を継続するとともに、
胸郭伸展可動域の改善及び肩関節外旋可動域の向上を目的とした、運動療法を実施していく方針とする。
【総括】
本症例は野球の投手における投球動作の反復に加え、サイドスローによる肘関節の伸展傾向および遠心力による外反ストレスの増大、
さらに硬式球の使用、高負荷トレーニングが複合的に影響し、肘内側への負担が蓄積したことで疼痛を発症したと考えられる。
この年代において筋肥大を目的とした高負荷トレーニングよりも、関節可動域の確保や筋肉の柔軟性の向上を優先する方が重要だと感じました。
また局所の疼痛の改善のみならず肩関節、股関節、胸郭などの他関節可動域の正確な評価を行うことが疼痛改善や再発防止に重要だと感じました。
また本症例では筋力トレーニングを一時的に中止したが、明確な再開の指標を提示できませんでした。疼痛、圧痛の有無だけでなく、
投球時や外反ストレステストでの痛みの有無の確認、投球練習を行う日には前腕のトレーニングだけ禁止するなど対応が必要だと感じました。
今後は、疼痛部位だけを評価するのではなく、関連関節の可動域や安定性の評価を意識し、局所の負担軽減につなげていきたいです。



